イラスト春2016
二月四日は立春です。といってもまだ寒さは厳しく、「春」の語には違和感を覚える方が少なくないでしょう。ただ、その原因は新暦と旧暦の差とするのは誤解です。

立春の定義は、新暦でも旧暦でも変わりません。立春を始めとする節気は、地球がどのあたりを今通行中か、ということを示す「太陽黄経」によって定められます。太陽黄経は表のとおり、太陽高度に直結します。立春を過ぎると太陽は日に日に高くなり、ほら、ぴったり地面にはりついていたタンポポはむくむく背を伸ばし、水仙や菜の花は咲き始めるし、梅だって‥。

草木の多くは、光の変化に私たちよりも敏感なようです。気温の変化は、光よりも遅れてやってきます。われわれ愚鈍な動物は、まあそれからということですが、光に基づいた春夏秋冬の区分は、私たちの祖先が植物(作物)と深く結びついて生を営んできた証でしょう。祖先というより、ほんの少し前まではそうだったはずです。

一月に「新春」というのは、これは新暦と旧暦の差によるものです。旧暦では、一月に立春はありました。新暦により「一月」という月が、春から晩冬に異動させられてしまったのです。一方、いま二月を春と感じられないのは、私たちの季節感の基準の方がずれてしまったのでしょう。
節気と太陽高度

作者 澤村泰彦(平塚市博物館

2016.5.1発行「しお風」掲載

 
 しお風 神保智子