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昔は七夕に里芋の葉の露を集め、その水で墨をすり文字を書いた、などと聞いたり、あるいはご自分でなさったことはありませんか?七夕に行われたものとして、二宮町梅沢地区に、ちょっと変わった事例が記録されているのでご紹介します。

昭和の初めころ、女の子たちがこのあたりの浜でミニチュアの物干しに紙の着物?を吊るし、水をかけるということをしていたそうです。県立歴史博物館に資料一組が保存されていますが、今はもう行われていません。以前、私が大正生まれの経験者にうかがったお話では、次のような内容でした。

 『八月六日に柳の枝をとりに行った。家で七夕飾りを作り、飾った。そのとき、短冊用の紙で着物を作っておいた。柳の小枝もいっしょにバケツに入れておいた。翌八月七日朝、近所の女の子たちと誘い合い、バケツを持って浜に出た。小枝で物干しを組み、紙の着物を掛けた。海水を汲んできて、枝の棒先に麻を房のようにつけた道具で着物に水をかけながら「七夕さまよ七夕さまよ、一に短冊あげますほどに、この手をあげてくださんせ、くださんせ」と歌い、だれの着物が早く濡れ落ちるか競った』

七夕に着物を干す風習は古くからあり、仙台の七夕飾りにも見られます。紙の着物を用いる例は近畿地方の一部に残ります。また、長野県などには紙の七夕人形の例がありますが、いずれも神奈川県内では珍しいものです。ご紹介した事例では着物が祓いに用いるヒトガタに似ている点も気になります。

七夕行事の日程は、地方により①七月七日②ひと月遅れの八月七日③旧暦の七月七日(毎年日付が変わる)の三通りがあります。明治の改暦は季節に一か月ほどのずれを生みました。季節を重視し八月に七夕を行う地域は少なくありません。

作者 澤村泰彦(平塚市博物館

2015.8.1発行「しお風」掲載

 しお風 神保智子