数年前に見た映画に、若いOLさんがロマンス相手の中年男性と野原で向き合い、問答するシーンがありました。

ところがちょうど二人の間に、道の傍らのドクウツギという低木がもっさりと枝を伸ばしており、私はストーリーと全く関係ないその「ドクウツギ」がどうにも気になって、大事な会話をすっかり聞き逃してしまいました。

ドクウツギは、トリカブトと並び称される?猛毒の植物です。図鑑に、赤い実を子どもが誤食するのを防ぐため、村の大人が刈り取ったなどと書かれています。

しかし、私たちが生きる自然界は元々危険な動植物だらけで、一切を駆除することは不可能ですし、それらもまた生態系の中で何かしら役割を担うことを忘れるべきではありません。
ドクウツギの例は、外見が子どもたちを誘い、とくに危険が大きいことから駆除されたのでしょう。

秋の山野にはリンドウとともにトリカブトの花の紫も人目を癒し、街の公園にも時にはテングタケが唐傘オバケのような姿を現します。イラクサをつかめば痛いし、ウルシに触れればかぶれて大変。

そんな中で身を守るには、周りには危険なものがたくさんあり、接し方を間違えれば生命にも関わる、ということをきちんと知ることが大切でしょう。私たちは危険の駆除に躍起になるうちに、大切な教育の機会を逸してはいないでしょうか。

かくいう私も、初めてドクウツギの実物を見たのは、ある町の植物園でした。教育は、学校だけでなく、博物館などを含め社会全体で行うものとあらためて認識した次第・・(いえ、結局CMでした)。
20171101イラスト

2017年11月1日発行地域コミュニケーション紙「しお風」から転載
平塚市博物館長の澤村泰彦さんが専門の星のことに限らず、博物館的日々の面白さを連載しているコラムです。
バックナンバーは「しお風」ホームページでご覧いただけます。
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