1月31日の晩に皆既月食がありました。この原稿はそれより前に書いているので、天候等、首尾がわかりません。いかがだったでしょうか‥?
201802しお風イラスト_澤村 (002)

さて皆既月食は、地球が宇宙空間に作る日かげの中を月が通過する現象です。

わたしたちは、暗くなる月を観察しながら、実は地球の影を楽しんでいることになります。そしてこの現象は、世界で同時に起きます(地球のうち、その時刻に月側にある半分で見られる)。

当然、誰かが見ても他の人の分け前が減ったりはしません。相手は三十八万キロ先なので、場所の奪い合いや囲い込みもなければ、抜け駆けの不安もありません。

なんとも、すがすがしい公平性です。

思えば、星たちの無数の輝きも同様です。何千年も前から全地球人が、同じひとつのものを眺めて一向に使いべりしません。

私たちは、ほとんどいつも、他人より一歩先に出て有利になりたいと考え、あるいは他人より優れた自分でありたいと願い、奪ったり、隠したり、責めたりと、結果、自分自身を苦しめてはいないでしょうか。

満天、雲ひとつない星空に対面した時、このままがいちばん、ありのままで十分と感じたことを、忘れずにいたいものです。

どんな成功者も、星空より美しく大きなものなど手に入れられません。それは、命がひとつということと同じくらいの真実なのです。

平塚市博物館長の澤村泰彦さんが専門の星のことに限らず、博物館的日々の面白さを連載しているコラムです。

2018年2月1日発行地域コミュニケーション紙「しお風」から転載
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しお風 神保智子