子どものころ、祖父がテレビでよく甲子園の高校野球を見ていました。
神奈川代表以外の試合も欠かさず見るので、どのチームを応援しているのか尋ねたら、とにかく少しでも近い方の学校を応援するのだと言っていました。

そうだったのか、なるほど。とその郷土愛に納得もし、一方で少し奇妙な感じもしました。日ごろ近くで練習をしている高校生を応援する気持ちはわかりますが、岩手県より宮城県を応援する、なんていうレベルになると‥う~ん??

甲子園における祖父の郷土愛は、帰属する社会に仮託された、自己愛のひとつだったのではないかと思います。

昨年12月の中央教育審議会(文科省の諮問機関)の答申に、博物館の役割に「シビックプライド」への期待が述べられていますが、平塚市博物館は「オレの街にはこんなお宝がある」というようなお国自慢的自己愛に役立つかは、知りません(まあそれも少しは努力しますが)。

私たちがめざすのは、あくまで直接サービスにより、何かを知る喜びを、来館する方々と共有することです。
暮らしている地域を、ともに目で確かめ、耳や手足で感じ取り、面白さを分かち合って、それを通じてあなた自身の毎日を豊かにすることなのです。

スポーツに例えればきっと、相手をたたえる「ノーサイド」の境地でしょう。自己の優越よりも、周辺に見つけることを喜び、尊重します。そうした発見の境地を誰もが知っている状態こそ、私たちの博物館がめざす社会なのです。

それにしても、私のおじいちゃんは、もしも火星代表と土星代表が甲子園で試合をしたら、やっぱり近いってことで火星代表を応援したのでしょうか‥。

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5月の展示「新着資料展 民俗・歴史」
5月11日(土)~6月2日(日)常設展示室寄贈品コーナー(無料)
炭火アイロンや、戦時中の訓練用なぎなた等、最近寄贈いただいた資料を展示します。
お問合せ 平塚市博物館  平塚市浅間町12-41  ☎ 0463-33-5111


2019年5月10日発行地域コミュニケーション紙「しお風」から転載
 このコラムの執筆者は平塚市博物館館長澤村泰彦さん
バックナンバーは「しお風」ホームページでご覧いただけます。
こちらです。